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知らない僕/私が、目を覚ます—。

宝石の力を持って生まれた人々、貴石の子。

その能力を民のために使うよう定められた国で
貴石の子として生まれながら
何の力も発現しない少年がいた。


屑石と罵られても前向きに生きる彼を
いつからか影で助ける人物が現れる。
一切姿を見せないその人を、
少年はソテイラ(救済者)と呼んだ。


少しずつ増えていくソテイラの噂、
彼女に救いを求める貴石の子たちの声。
それを阻止したい国の思惑。


ソテイラを助けるため、
少年は動き出す――。


鈴木デコ×hidekazu が描く、

力を"持つ"者と、"持たざる"者、

その狭間を生きる物語。

 

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2025-M3秋  東京流通センター 

第一展示場  L-24a

2025.10.26​ Release

全12曲 1,300円

・ダウンロードコード

・B6サイズ16Pブックレット

Track List

01. 貴石の子
02. Niks
03. 煌めき薫る街
04. 煌めき響く街
05. Soteira
06. 噂は踊る
07. 想い巡る森
08. 水鏡のアリエッタ
09. 正義を掲げし魔王
10. 石語りのフォークロア
11. Niks (off vocal)
12. Soteira (off vocal)

Credits

Produced by 鈴木デコ feat. hidekazu
Illustration by moony.
Lyrics / Vocal / Chorus / Design / Mastered by 鈴木デコ

01.  貴石の子
 Music&mix: hidekazu

 

02.  Niks
 Music&mix: 鈴木デコ

 

03.  煌めき薫る街
 Music&mix: hidekazu
 Violin/Cello: 松本一策

 

04.  煌めき響く街
 Music&mix: hidekazu

 

05.  Soteira
 Music&mix: 鈴木デコ

​ 

06.  噂は踊る
 Music&mix: hidekazu

07.  想い巡る森
 Music&mix: hidekazu

 

08.  水鏡のアリエッタ
 Music&mix: hidekazu

 

09.  正義を掲げし魔王
 Music&mix: hidekazu

 

10.  石語りのフォークロア
 Music&mix: hidekazu

 

11.  Niks (off vocal)
 Music&mix: 鈴木デコ

​ 

12.  Soteira (off vocal)
 Music&mix: 鈴木デコ

Trailer

Story

石の民が住む国、ユヴェル。
そこでは宝石の愛を受けた子、
貴石の子が稀に生まれてくる。
彼らは不思議な力を持っていた。
ある者は浄化を。
ある者は豊穣を。
ある者は知恵を。
授かった力で民を助けること、
それが定められし務めであった。


宝石の力が飛び交う活気ある街。
森に息づく魔石獣たち。
夜を照らす蛍光石のランプ。
煌めく世界を支えているのは
貴石の子たちの労働であり、
果てはその命であった。


少年ニクスは貴石の子であるにも関わらず、
いつまでたっても何の力も発現しなかった。
屑石だと罵られても、
優しい両親が亡くなっても、
彼は前向きに生きてきた。


ある日ニクスは気付く。
誰かが助けてくれていることに。
朝目覚めると一つ一つ問題が消えている。
彼はその人をソテイラ(救済者)と呼び、
いつか出会える日を待ち望んだ。

 


宵闇を駆ける赤髪の少女がいる。
どこからともなく噂は生まれ、
じわじわと国中へ広まった。
噂には徐々に尾ひれがつき、

終いには貴石の子をさだめから救う者だと
信じられるようになった。


国を守る大臣たちは畏れた。
貴石の子たちの能力に頼って
他の民の生活を潤し、
不満の矛先を国から逸らし続けてきた。
その"仕組み"を脅かす者は
野放しになどできない。


誰しもが赤髪の少女を探し始めた。
落ち着きのない人々を見て
ニクスは不安を覚える。
きっとその少女はソテイラだ。
誰に捕まったとしても
彼女の自由は死ぬだろう。
ソテイラを探し、この国から逃がそう。
これは彼女への恩返しだ。
彼は旅立ちを決意した。


ふと少女は目覚めた。
豊かな赤髪をかき上げ、
気だるそうに月へ目をやる。
ざわざわと森の子守唄が響いている。
寝床にしては開放感が過ぎやしないか。
やってくれたな、ニクス…と呟いて、
ふと在りし日の両親に想いを馳せた。


貴石の力によって生み出された
ニクスの変化した姿、それが彼女である。
就寝後にしか現れることのできない、
貴石の能力そのものである彼女。
それでも両親はひとりの娘として

受け入れ愛してくれた。
一方、その存在を生涯口外しなかった。
ニクス本人にすらも。
彼女に宿る、全てを変えられる力。
ひとたび誰かに知られてしまえば、
欲望を満たす道具に成り果ててしまうだろう。
両親は繰り返し言い聞かせた。
人目にはつかないようにすること。
その力はニクスのためだけに使うこと。
愛する両親のために、
静かに生きていくために、
彼女はその約束を守り続けてきたのだ。
例え同じ体でも、
経験や記憶は共有できない。
家ではない何処かで寝ていた事実は、
何かしらの異変を示唆している。
人目につかぬよう夜に紛れ、
情報集めに奔走した。

 


ニクスは国中を旅する中で
「月光石の泉」の噂を知る。
全身月光石と化した貴石の子が沈む泉は
満月の夜に幸運の光を灯すという。
森の奥を駆けずり回り、
やっとのことで見つけたそれは、
鏡のような湖面に暖かな光を湛えていた。


思わず覗き込んだ先には
こちらを真っ直ぐに見つめる赤髪の少女。
月光石の力を借りて、
二人はついに邂逅を果たしたのだった。
少女から語られる彼らの秘密。
両親の想い。

だから、逃げようも無いということ。


緑の眼からこぼれた雫は
赤髪の少女を揺らしている。
やっと会えた歓びと、
彼女を助ける術が分からない焦りは
ぽつりぽつりと止め処無く落ちる。
揺れる赤髪のさらに奥深くで
かつて人だった月光石が祈るように光っている。
それを見て彼はハッとした。
どうしてソテイラやこの月光石は
何かの犠牲になる運命なんだろう。
ああ、僕は彼女だけでなく
貴石の子みんなを幸せにしたいんだ。
変えなきゃ。
こんな世の中、変えなきゃ。
ニクスの目が赤く瞬いた。

 


国の中枢で悲鳴が上がる。
大臣たちが宝石と化し、
腰を抜かした国王を見つめながら
赤眼のニクスが優しく微笑む。
これもみんなの為だよ。
彼が手を伸ばすと、
僅かなうめき声を残して
国王も宝石へと姿を変えた。


居合わせた者たちによって
その様子は国中へと広まっていく。
貴石の子らにとっては朗報として。
持たぬ者らにとっては悪夢として。
噂の救世主だと信じた人々は
ニクスを新王に即位させた。
国の様子は一変する。
能力を持たぬ者が格下とされ、

従属が求められるようになった。
従わぬ者は石化の罰を受ける。
死の恐怖が支配する平和。
胸の中でソテイラが騒いでも、
彼は心に蓋をし続けた。


民がその状況に慣れきった頃、
突如城に侵入する者が現れた。
その者は王の御前に飛び出して
石を投げつけながら叫ぶ。
魔王め!
父さんを返せ!と。
見ればボロを纏った、
持たぬ者の子。
年端も行かぬ子供が、
必死の形相で睨みつけていた。


魔王?
僕が?
ニクスの眼が緑に揺れる。
こんな光景は望んでいなかった。
幸せを願っていたはずなのに、どうして。
その瞬間、彼の体が赤髪の少女に変化した。
心の隙をついて出てきた彼女は
泣きながら呟いた。
貴方だけを悪者にはしないわ、と。

あらん限りの力を解放して、
彼女は国の全てを宝石に変えた。
あらゆる命を無機物に帰して、
自身も宝石として眠りについた。

かつてユヴェルと呼ばれた亡国は、
宝石として虚しく輝く人々が数多眠る。
城だった遺跡の中に佇む、
祈り子の姿をした宝石。
昼夜色を変えるそれは、
「変彩のソテイラ」と呼ばれ、
変わらぬひとの本質を

今も問い続けている。

​​

©2024 by Deco Suzuki

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